■2003年7月1日
■IBM総会
■文中のハイパーリンク、( )内のことばは当サイトが補足
講師 KPMGフィナンシャル(株)社長
木村剛
マイナス金利ということばが新聞にでている。
お金を借りるとお金がもらえるという不思議なはなし。
メガバンクでさえ海外でドルやユーロを貸してもらえない。だがメガバンクは海外にたくさんの人を依然として置いている。
ドルや
ユーロが欲しいと円を渡さないといけない。
だが手の内を知られたギャンブラーは弱い。
海外銀行は120円調達する時に10銭もらえる。それがあたかもマイナス金利が発生しているように見える。
日本の円を調達したがそれを日本の銀行に預けたくない。つぶれない日本の銀行はないか。ある、それは日本銀行だ。
ただ日本銀行に預けても利息はもらえない。だが10銭はもらえる。
だがさすがに今年1月頃から本国から「日銀といえども日本の銀行だぞ危ないじゃないか」とストップがかかった。
欧米の銀行は円はひきとらない。そこで10銭をつけて相手に押しつける。ここでマイナス金利となる。
金利平均がマイナスとなると言う現象、これは国辱である。
このままいくと日本企業は信用できないと言う連鎖が起こる可能性を否定できない。トヨタや
ソニーは自社債で資金調達できるがそれに関連して海外進出している企業はどうか。
海外の金融機関が与信するときには、その国の景気、金融
システム、財政を審査する。
シティバンクは日本を危険国と指定してきた。日本支店はそれでもなんとか貸したいので「国はだめだけど企業は優秀だ」と本国を説得したのだがダメだった。
1か月前、FRBがきた。その名刺の肩書きが「危険国担当」だったりする笑えない話しがある。
知人で公的資金をもらっている銀行を20年勤めた45歳の人がいる。その退職金がいくらだと思うか?
(1千万円刻みで挙手を求める。3千万が大半。6千万でゼロになる)
7千万円です。
でもその人の言い分は
「これから定年まで1,000万円ずつもらえば1.5億。それを半分しかもらえないのはなにごとか」
常識はどこへいったのか?
りそなの件は、あれが100点満点の解決じゃないかも知れない。
金融業界では「公的資金を2回もらっただけで役員が5人クビで退職金が出ない・・信じられない」と怒っている。
日本の金融機関は**総研というシンクタンクを抱えている。ここは20人からの人が居て年収1千万超の人が誰も見ないGDP予測なんかを作っている。
銀行を黒字にするのはかんたん。業務フローでは儲かっている。金利ゼロで預かって3%とかで貸していれば儲かって当たり前。子会社に対する資金を止めるだけでよい。
バブルの頃は経済規模の10%増しのお金の量。今は35%増しのお金の量。なのに銀行の貸し出しがどんどん減っている。銀行はなにをやっているか。
国債を買っている。
銀行は経済の血液であるお金を流通させている。信用乗数という数値がある。数年前は、たね銭を13倍ふくらましていた。今は7倍。貸出能力は半分になっている。
そこで量的緩和が始まった。この5年世の中のお金は3%増えた。だが貸出は1%減った。
インフレターゲットを言っていた学者は10年前、「金利を下げれば景気は良くなる」と言っていた。それが状況が変わると→量的緩和→インフレターゲットと言うことを変えてきた。
インフレターゲットが成功するには次の3つの条件が必要。
1.福井総裁のことは信頼する。
2.ある日、福井総裁が物価上昇率は3%だといい、皆は信じる。
3.日々の消費生活はそれを信じて買い続ける。
これがうまくいった国はない。
アルゼンチンがそれをやろうとした。アルゼンチンは
デフレがつづき失業率20%、通貨価値が実力より高すぎた(1米ドル=1ペソ)。ブラジルが為替を安くしてアルゼンチンの輸出産業を駆逐していたからだ。そこで学者が「デフレはいけない。為替を安くしよう」と言った。変動為替になった。1ドル3ペソになった。短期金利が100%になった。
いまの日本は 日銀→銀行→
国債 とお金が回っているだけ。最近は
国債も心配になって日銀⇔銀行でキャッチボールしている。これで景気が良くなったら奇跡。
なぜ貸さないのかというと銀行は「資金需要がない」という。そういえば格好いいが・・
需要がない・・なら商売を辞めろ。経営者なら言ってはいけない。
1998年に長銀が破たんした。破たんする4か月前、自己資本比率は10.32%あった。ふつう8%あれば健全。世界の最短破たんでギネス級の記録だ。
自己資本比率10%ということは借金を払い終えたら10%資産が残るということ。でも精算したら5兆円債務超過だった。それでも信用できぬと
リップルウッドは瑕疵担保特約を求めた。
経営者が5兆円を隠していたのだ。問題を隠すのに一番てっとり速いのは大きいダメ企業への貸出を「問題ない」と言い張ること。
銀行は
自己資本比率をかさ上げすることばかり考える。
これを上げる方法は2つ
1.資本を上げる→利益を上げる→貸出金利を上げる
2.資産を減らす→貸出を減らす、貸しはがしをする
2002年10月25日、メガバンクの頭取が「
サッカーをやっていたらアメフトのルールに替えられた」と怒ったことがあった。
だがその後の調査結果で資産実態は最大2倍違っていた。
繰り延べ税金資産、結局3年になった。
勝田さんは信義則に違反していると言ったが、監査法人は粉飾を手伝うお友達と思っていたようだ。
虚偽報告は刑法違反。日本は粉飾に寛容。不良債権問題は不良企業が過剰であるということ。不良な企業が退場せず安売りだけをする。
過剰債務だけで破たんすることはない。過剰債務をなくしてやったからまともになるということはない。まっとうな企業が迷惑する。
あるゼネコン、3回目の債権放棄の記者会見で社長が「うちも借金がなければぴかぴかの会社なんだ」と言っていた。当たり前だそんなこと。退場してくれれば、その埋め手はいくらでもある。
少子高齢化
今は1人を5人だが、40年後には老人1人を2人で支える。生産性を2倍にあげなければ生活レベルは半分になる。あるいは誰かの生活レベルを下げる。
その時に法人税を払ってくれる元気で若い企業がたくさん必要だ。
優良企業は海外に本社を移そうと考えている。
退場のいたみを分かち合うことは必要。
インフラである金融をまっとうにしなければならない。
金利を上げるならリスクの高い企業、儲からない企業から。いずれも問題大企業だ。
これまで隠していた問題が見つかるから問題大企業にメスを入れられない。
りそなでは、先に資金を入れて後から再査定をやる。これは再査定権限が金融庁に与えられていないため。(デューレジデンス)
債務者をきちんとみて貸出をしっかりやることしか再生の道はない。
不良債権問題は財政にしわ寄せすることにより片づく。だが財政赤字の解決は難しい。手のおえない化け物になりつつある。
→
リアルタイム財政赤字カウンター
楽観的な学者でさえ消費税が25%必要としている。悲観的だと70%。
財政赤字がつづいて金利が上がらなかった国はない。為替が下がらなかった国はない。
解決は論理的には3つ
1.資産を急に膨張させる
2.負債を圧縮する 預金封鎖 資産封鎖
3.皆が気づかないように祈る
「国民は1400兆円の金融資産を持っているから大丈夫」という人が居る。それに財政赤字吸収されると・・。
その論理をマイカルになぞらえると
「マイカルは赤字を抱えている」
↓
「国民は1400兆円の金融資産を持っている」
↓
マイカルの借金は国民の資産で吸収されるか?
そんな論理は成り立たない。
国は破たんしないというのが前提にある。
個人向け国債が売れなくなっているのは危険な兆候。ドル建て、ユーロ建ての
国債なら売れている。
戦時国債の経験世代は「国が
国債を国民に売るようになったら終わり」と言っている。
個人国債の藤原ノリカのポスターはすばらしい。キャッチコピーは
「
国債っていいかも」
財務省ではこのいい
かもの”
かもをカタカナにするか
漢字にするかで大変な議論をしたという話しもある。(笑)
(場内一部の人しか意味が分からずややウケ)
カナダ、
イタリアではキャピタル・フライトが起こった。
金融資産が逃げて金利が上がって政府はようやく気が付いた。
日本にはまだ元気な企業はある。なんで
六本木ヒルズにあんなに人がくるか。余裕はある。本当に努力した人が報われるマーケットにしなければならない。日本のマーケットはまだ
英国、ドイツ、
フランスを足したくらいある。
悲観すべきは悲観論を悲観すべき。
こんなに安くお金が借りれて、安く雇えて、皆萎縮していてライバルもいない。こんな好機はない。
好転のきっかけは金融の正常化だろう。
タブーなく、まっとうなビジネスをすれば開かれる。